PTAの適正化と適法化

2021年1月現在、PTA活動をされている方々にとって大きな話題になっているのは、PTAの組織としての行動において適正かつ適法であるかという点です。

初めて、この問題に触れる方のために、すこし丁寧に説明をしたいと思います。
ただ、個人的な見解が一部含まれていますので、その点はご了承ください。明らかに間違っているよー!という所があれば、お問い合わせよりご指摘ください!

今までのPTA活動(1950年ぐらいから2010年ぐらいまで)

さて、2000年ぐらいまでのPTAは、少しは問題提起をされながらも、そこまで大きな社会問題にならなかったという経緯があります。

大きな転機となったのがやはりこの事件かなと。冷静に考えてみると事件というほどのものでも有りませんが。

2016年3月25日に開催された「1億総活躍国民会議」の内容においてタレントの菊池桃子さんが「学校のPTAは、入っても入らなくてもどっちでもいいはずなのに、全員参加の雰囲気がある」という発言をしたと公表したことだったと思います。内容をまとめると「任意加入の団体なのに強制加入になっているのでは?」と疑問を呈した形です。

ちなみに、これは適正化にどちらかというと近い問題です。厳密に言うと強制参加という点があれば適法化にも抵触している部分もあります。

任意加入に疑問を呈しただけで揺らぐ組織

ここで、PTAに何の関わりもなかった人は、なんでそこまで話題になるのだろう?PTAって怖いとこなの?という風潮が出来てしまったのは結果論としてあると思うのですが、そもそもがこの時期まで(今もその傾向のあるPTAもありますが)専業主婦が主体となる活動が多かったのです。バブル崩壊前までは、専業主婦層が多く、その方々がPTAの基本的な活動や歴史を作っていった経緯があります。

実は、この時期より前の1985年辺りから、バブルの崩壊以降、専業主婦から仕事を持つ主婦が増えているのです。そして、2010年頃には完全に逆転し、菊池桃子さんの発言があった時には、割合的に専業主婦と共働き世帯が逆転しています。ちなみに、離婚率も上がって母子および父子家庭も増えています。

資料出所:厚生労働省「厚生労働白書」、内閣府「男女共同参画白書」、総務省「労働力調査特別調査」、総務省「労働力調査(詳細集計)」

参考資料リンク
図12 専業主婦世帯と共働き世帯 1980年~2019年

この表を見る限り、菊池桃子さんが発言しなかったとしても、すでに問題が起きており、社会問題として提示されてもオカシクない状況だったのです。この時点ですでにPTAの任意加入に関連する裁判も実際に起っています。

この時期にすでにPTAに関わる保護者からは「子どものためとは思うけど何かオカシクないか?」という意見が出てきていたのは予想が付きます。それの根源は前年踏襲型の組織という点です。

前年踏襲型組織の問題点

前年踏襲型の組織の利点と欠点を冷静に考えてみたいと思います。

前年踏襲型の利点

  • 短期間で対応する場合に前年と同じことをすれば良いので、担当になっても簡単。
  • 前年と同じことをするのでマニュアル化しやすい。
  • 同じ内容の経験者がいるので、先輩に相談しやすい。

前年踏襲型の欠点

  • 前年と同じことをするので、数年すると陳腐化しやすい。
  • 新しいことをしようとすると、前年と比較するので新しいことをしにくい。
  • 社会情勢の急激な変化に対応しにくい。

多分、1980年より前の専業主婦家庭が大多数を占めていた時代は、共働きの家庭が少数だったため、専業主婦の家庭がお互い様の意識をもって負担を共有することが出来たのではないかと推測されます。ですが、共働き家庭の割合が増えてくると半数以上の家庭にとって前転踏襲の活動が負担になってきて、お互い様の意識を持つことが出来なくなり、前年踏襲型の欠点が大きくなってきたのだと思います。

負担が大きいので簡素にしようとすると、前年踏襲の流れで変えにくいという感じです。PTA役員経験者などでは心当たりになる方は多いのではないかと思います。

前年踏襲型と任期が短期間なので変化しにくい

PTAの設立から初期の安定期までが、専業主婦が主導して、専業主婦にとってやりやすい形になっていたのは、想像できます。そのまま、時代が過ぎてくれれば良かったのですが、時代が変わり専業主婦が減った現代では、前年踏襲型では専業主婦に負担が大きくなるか、共働きの家庭に負担を押し付けるかのどちらかに動いてしまったこともうなずけます。

そのため、公平性を求めて、ポイント制やくじ引きによる業務割当制度的なものが発生して、それが結果として、多くの保護者にとって負担になってきたのは想像に難くないです。これを考えだした保護者たちも大きく間違っていたわけではありません。

こう見ると分かりますが、誰が悪かったと言うよりも、組織としての欠陥が原因です。組織として、時代に対応した進化が出来ていなかったことが大きな原因だと思います。追加して、社会変化が組織熟成よりも早すぎたということもあると思います。

そんな中で起きた適正化と適法性の問題

そんな中でPTAの組織としての問題点が提起されるのは正しい流れだと思います。大きく指摘されている問題点は、適正化と適法化です。この問題点を箇条書きで書いてみます。

適正化の問題点

  • 任意団体なので、任意加入が基本であるが、実質的に強制加入になっているPTAが多い。
  • 強制加入だけでなく、強制労働的な役員選出の仕組みになっている。

適法化の問題点

  • 個人情報保護法が成立したため、個人情報の取扱を入会時に説明が必要となり、入会を明確化し、退会の自由も明確化しないといけなくなった。
  • 役員の選出を入会前に決めることが、個人情報の取扱いにおいて違法性の高いものとなった。

ざっくりと書くとこのような問題点があり、今までのPTA組織としての動きでは難しい問題点が出てきているのが多くのPTAの抱える問題点だと思われます。

組織と時代の流れなので誰も悪くない

このように考えると、今までのPTAに関わってきた人が悪いのではなく、組織の仕組みや時代への対応の問題なのです。過去のPTA会長や本部役員が悪いわけではないのです。

ただ、この現実を認識しても、前年踏襲に拘ったり、公平という名の強制を行うことがどういう意味合いで問題があり、変化が現在必要となっていることを認識できるかどうかに掛かっています。

まずは、情報の共有が大事だと個人的に思っています。

もっと、PTAの成り立ちや過去の流れについて、知りたい方は以下の2冊の本が個人的にはオススメです。

これを元に、適正化と適法化についても、個別に考えていきたいと思います。